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久松です。
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
年末に、録画しておいたTBSの『クリスマスの約束』を観ました。小田和正が若いミュージシャンと共演する年一回の番組です。
スキマスイッチらとの「ムッシュかまやつのメドレー」、和田唱との「ミュージカル映画音楽メドレー」、全員での「ダニー・ボーイ」など、古今東西の名曲が20曲以上演奏されました。
僕は子供の頃からいろいろなジャンルの音楽を聴いていますし、映画も古典を数多く観ています。
なので、今回登場した曲のほとんどはオリジナルを知っているし、映画音楽メドレーで出てきた『ウエストサイド物語』『メリー・ポピンズ』『ティファニーで朝食を』なども当たり前のように全部観ています。
それが前提で、今回のカバーを楽しみましたが、よく考えると、若い視聴者には初めての曲も多かったはずです。
参照するもの、があるかないかで受け止め方は変わります。
今日、何かを美しいと思う自分の価値基準は、昨日までの人生で培われてきたものです。
透き通るような空を横切る飛行機雲に心を奪われる気持ちの中には、これまで見たもの、聞いたもののすべてが反映されています。
ひとりひとりが違う親から生まれ、違うスポーツをし、違う人を好きになって生きてきたのですから、同じ空を見ても感じ方はそれぞれ違って当たり前でしょう。
内なる飛行機雲に感じる、我が内なる美しさを共有するには、同じ空を見上げるだけでは不十分です。
僕の今の仕事は野菜をつくることです。
久松農園の野菜づくりには、そのプロセスにも結果にも、僕が美しいと思うものが詰まっています。
野菜や畑を通じて自分の美しいと思うものを伝えたい、というのが農業を続けている理由です。
農業は一人でできることではありません。
一緒につくる仲間、食べてくれる人たち、運んでくれる人たち、道具をつくってくれる人たちなど、無数の人たちが関わっています。
別々の人生を歩み、別の価値観を持っている人たちと一緒に何かをつくるためには、価値観の共有が必要です。
過去に、なかなか思いが伝わらないスタッフに対して、「僕が読んできた本を全部読んで!」と無茶を言ったことがあります。
偽らざる気持ちでしたが、そんなことは不可能です。
仕事というのは、先達が積み上げてきたものを受け取り、何かを付け加えて次の人に渡すことです。
同じ本を読んだり、映画を見るのではなく、一度自分の体を通した何かを伝えなければなりません。
同じ体験をしろ、と思うのは、自分の価値観をきちっと結晶させていないことの表れとも言えます。
70歳になった小田和正が共演したミュージシャンの中には35歳の水野良樹もいました。
年が倍も違う二人は同じ音楽の中に溶け込んでいました。
僕も、ウチのスタッフやお客さん、若い農業者たちに、正面から堂々と自分の価値観や美意識を伝える年にしたいと思います。